第13章 Move Over
眠ってしまった和也を抱いて、風呂に入った。
身体を軽く流して、浴槽に入る。
温かい風呂にはいるのなんて久しぶりだった。
和也を抱きしめる俺の左手には、深い深い傷跡。
…一生、これを見るたびにあの夜の事を思い出すのか…
そして、一生この傷を見るたびに和也を見つけた喜びを思い出す。
もう何があっても。
死んでも。
和也を離さない。
動き出した時間の中で、きつくそう思う。
決意とか決心とかいうものじゃない。
これは決定事項であり、俺にとっては生きている理由だ。
和也をこの腕に抱いて、わかった。
和也がいなきゃ、俺は生きてない。
生きているように見えた、屍だったんだ。
だから、雅紀に隙を見せてしまった。
俺が受け入れなきゃ、雅紀だってああならなかったかもしれない。
俺の止まった時間が、雅紀を狂わせたんだ…
ぎゅっと和也を抱きしめる腕に力を入れる。
この世の苦しみから全て解放されたような寝顔。
見ているだけで、幸せになる。
「和也…愛してるよ…」
頬にキスを落とすと、くすぐったそうに微笑んだ。
そのまま、俺の天使は眠りにまた落ちた。