第13章 Move Over
身体が揺れてる。
エンジンの音が聞こえる。
「おいっ!翔!目を覚ませっ!」
翼…?
なんで翼の声が聞こえるんだ…?
肩を掴まれた感覚で、目が開いた。
翼の顔が見えた。
「翔!」
翼の眉間が開いた。
「ああ!良かった!おい、わかるか?」
俺の肩を揺らす。
「助かったんだよ!翔!」
涙を流しながら、俺の肩を揺らし続ける。
え…なにこれ…
生きてる…?
死ねなかった…
一気に現実が襲ってきた。
和也は…?
あれは、夢…?
ああ…
もうどうでもいい…
また俺は、この辛い現実で生きていかなきゃならないのか…
涙が顔を伝う。
和也…お前のところにいけなかった…
会いたいよ…
会いたい…
傍に…
「しょうっ!」
「しょうさんっ!!」
声のする方に、顔を向けた。
涙で顔をぐしゃぐしゃにした和也がいた。
思わず手を伸ばすと、和也は俺にしがみついてきた。
「しょうーっ…」
「和也…」
あたたかい…
和也…
本物だったんだ。
ずっと俺の傍にいてくれたんだ。
「和也っ…」
涙が止らない。
和也を手放すことができない。
抱きしめる腕に、力の加減ができない。
握りつぶしてしまいそうだった。
「和也っ…どこいってたんだよぉっ…」
「しょうさぁん…」
「もう、絶対どこにもいくな…俺の傍から離れるな…」
「うん…」
「絶対だぞ…?」
「はぁい…」
和也の顔を撫でる。
変わらない。
吸い付くような肌。
和也が唇を寄せてきた。
受け止めると、熱かった。
しっとりとした唇から、唾液が零れた。
舐めとると、和也がなきわらいした。
俺も笑う。
左手が、熱い。