第12章 Maybe
カイロにきて三ヶ月経った。
めぼしいスラムは回った。
そこには和也の影はなかった。
探す地域を広げようか迷っていた。
でも潤が日本に帰りたがった。
そろそろ智にギターを触らせてやりたいと。
それにだんだんカイロ市街も、危険度が増してきて。
退去勧告を何度も受けた。
大使館から人がやってくるたびに対応するのは潤で、だんだんと危険を感じていたようだ。
親父のほうから手を回してもらって、無理やり滞在していたけど、それも限界がきたようだ。
親父から何回も帰ってくるよう電話が来た。
しぶしぶ日本に帰ることを決めた。
あと3日で帰ると決めて、その間に取り漏らした地域のスラムを訪ねて回った。
何回か危ない目にはあった。
すぐ近くで、銃撃戦が始まったこともあった。
その度に翼と現地の人と逃げ惑って、なんとか難を逃れてきた。
この日も…
俺は無事に逃げられると思ったんだ…
スラムへの道をたどっていると、すぐ近くで爆音がした。
俺たちはとっさに身を屈めてあたりを見渡した。
前方で黒い煙が上がって、建物から炎が見えた。
とっさに逆方向へ走る。
後ろから来た人々に押されるように俺たちは走った。
だが次の瞬間、背中になにかのしかかったかと思うと、俺はうつ伏せに倒れた。
後ろから人が俺を踏んづけていく。
逃げなきゃ…!
そう思うが、身体が動かなかった。