第12章 Maybe
「現在のエジプトの情勢は、非常に不安定です」
今井さんの運転する車に揺られながら、簡単に現地の説明を受けた。
「現在、テロリストの掃討作戦が行われています」
ギアを変えると、俺の顔を見た。
「でもそれは名目で、反体制派を壊滅させる目的です。だから、いつどこで銃撃戦があってもおかしくないし、巻き込まれても文句は言えない」
じっと俺の目を見る。
「それに、ISもエジプトに迫っています。情勢の不安定なところばかり狙っているからです」
ふとまた目を前に向けた。
「ISによる、外国人誘拐事件も多発しています」
またギアを変える。
でこぼこした道を、今井さんは器用に走る。
「日本政府による、アラートマップは、真っ赤ですよ。正直、あなた方、正気ですか?」
「はぁ…」
潤がマヌケな声を出した。
今井さんは溜息をついた。
「まぁ…今回は同僚であった小原の頼みは断れなかったんですがね…本当は入国すら、阻止したかったですよ…」
また溜息をつくと、今度は笑顔になった。
「でも、正直、日本人がこなくなって、商売あがったりだったから。助かりました!」
がくっと智がシートに倒れこむのが見えた。
なんだろう…この落差…
「あんたは平気なのかよ…アンタだって日本人だろ?」
智がシートに寝転んだまま聞く。
「俺は、ここでの生き方ぐらい知ってるよ」
そういうと、今井さんは微笑んだ。