第3章 Call on Me
もういいですよと看護師に声を掛けられ、処置室に入った。
かずなりくんはすやすやと眠っていた。
唇には血がついたままだった。
俺は唾をつけると、指でその血を拭った。
うっすらと目をあけた。
「しょ…」
そういうと手を伸ばしてきた。
ぎゅっと俺の手を握った。
「ありあとお…」
まっすぐな言葉だった。
胸を衝かれた。
「だぁいすきです…」
微笑んで言うと、そのまま目を閉じた。
「かずなりくん…?」
眠ったようだった。
そのまま手を握っていると、先生がきたので交代した。
先生にすごくお礼をいわれて、照れくさくなったからそのまま帰ってきた。
「また、遊びにきてください」
「ははっ…バイト代でます?」
「今度は和也くんと遊んでやってください」
苦笑いして答えてくれた。
じゃあ…今度のバイトの休みにでも…
そう答えて病院を後にした。
俺は…かずなりくんになにかしてやれるだろうか。
とぼとぼ歩きながら、ほつれたTシャツを眺めた。
自閉症にてんかん。
こんなに神様は彼に背負わせて、一体どんな試練を彼が望んだと言うんだろう。
足どりが重かった。