第11章 Tell Mama
ツアーのリハーサルが終わる頃、侑李はすっかり俺に懐いて離れなくなった。
俺って、そういう質なんだろうか…
和也と暮らしていた頃を思いだなさいわけじゃない。
でも、侑李は和也じゃない。
淡々と俺と侑李の日常は流れていった。
雅紀が侑李を連れていくと、少し部屋のなかが広くなった。
でもそれだけだった。
リハーサルが上がると、すぐにツアーに入った。
その前日。
俺は榎本に会いに行った。
ツアーが終わったら、和也を探しに行く。
そう告げるために。
榎本も不法入国で日本に連れて来ていた。
そこからずっと軟禁状態にある。
でも、本人は積極的に逃げるでもなく。
無気力に日常を過ごしている。
俺はそんな話をずっとガオから聞くだけだった。
ガオだけ、榎本に会いに行ってる。
最初は殺すつもりだった。
でも、アイツは死にたがってる。
なら、生かしてやる。
生かして、のたうち回って苦しめばいい。
ガオはそう言った。
俺は、全てをガオに任せた。
だって、俺と榎本はあわせ鏡。
アイツが俺になった可能性も、俺がアイツになった可能性もあったのだから。