第11章 Tell Mama
「翔!」
「なんだよ」
振り返ると、親父が頭を下げていた。
「なにしてんだよ…」
「すまん。お前を出世の道具に使わせてもらう」
「は…?」
「お前に金を渡すことが、結果的にそうなるだろう…」
上に、印象づけるってことか…
俺達の事件は、相当世間の感心の的だからな…
それだけじゃないって、俺に釘刺しときたかったのか…
「ありがと。わかってるから。父さん」
そう笑うと、親父の目が潤んだ。
「え…?どうしたんだよ…?」
「美穂から聞いている…お前と和也くんのことは…」
「ああ…」
「俺には信じられない。本当なのか…?」
「ああ」
「え?」
「だから、本当だって」
親父は頭を抱え込んだ。
「理解できない…」
「だから、無理にしなくていいよ…」
「本当に愛しているのか?」
「愛してる」
言い切ると、親父は俺から目を逸らした。
「……金は、後日振り込む」
「ああ…ありがたいよ。借金あるから…」
「…なんの借金だ」
「5年間の調査費用だよ」
「お前…」
「だから、いくらでも助かるよ。ありがとう」
「…ああ…」
立ち上がると、後ろから声をかけられた。
「1000万しか用意できなかった」
驚いて、コケそうになった。