第11章 Tell Mama
「父さん…」
書斎に入ると、親父が俺の顔を見た。
久しぶりにまともに顔を見たかもしれない。
「ま、座れ」
ソファを顎で指すと、立ちあがった。
大人しく座って様子を見てたら、なにかいいにくそうに佇んでいる。
「なに…?」
「いや…痩せたな、お前」
「まあね…しょうがないだろ。まだ完全じゃないし…」
「そうか…」
暫く沈黙が落ちた。
「翔…」
「ん?」
「お前に資金を提供する」
「ああ…美穂さんから聞いたよ」
「親として…」
「え?」
親父は肩を落とした。
「いや…」
そういうと、また俺の顔を見なおした。
「本当に、行くのか?」
「…ああ…」
「和也って子は、お前にとってなんなんだ」
「…関係ないだろ…」
「でも、あんな政情が不安定なところにわざわざ行って、探すなんで…」
「わかってんだろうが…」
「え?」
「親父、何もかもわかってんだろ?」
多分、美穂さんを通して色々調べてるはずで。
俺達の事件が、報道されてるような美談じゃないことだって知ってるはずで。
「残念だったな…望み通りの息子じゃなくて」
「……そんなことは7年前にわかっている」
顎をなでて、動揺を隠そうとしているのがまるわかりで…
「ごめんな、親父…」
そう言って立ち上がろうとした。