第11章 Tell Mama
しばらくして、ぽっかり空いたスケジュールがあったから、親父に会いに行った。
久しぶりの実家は、何一つ変わっていなかった。
ドアホンを鳴らすと、いきなりドアが開いて、美穂さんが顔を見せた。
「翔さん、いらっしゃい。お待ちかねよ」
美穂さんは親父の秘書だった人で、今は後妻。
3年前俺の母親は亡くなった。
ガンだった。
先生と同じく子宮がんで、俺はこの因果に涙が止まらなかった。
でも親父は、母さんの喪が明けるとすぐに再婚した。
外務省の高官である親父には、外国人の集まるパーティーでエスコートする妻が必要だったのだ。
軽蔑してた。
だけど、美穂さんに会ったら全然想像と違った人で。
母親の闘病中から、ずっと親父を支えていたのは美穂さんだったんだ。
身体の関係は結婚してからで。
俺も大人だからそんなこととやかくいうつもりはないけど…
美穂さんは一生懸命俺に説明してくれた。
あなたのお父さんは、何一つあなたのお母様に不誠実なことはしていない。
自分と結婚したのは、自分の秘書としての働きに対してのギャランティーみたいなものだから、と。
今でも、あなたのお母様を愛しているのよ。
涙ぐんで言った。
美穂さんは親父に惚れてるんだな。