第11章 Tell Mama
それからavidのレコーディングは異例の早さで進み。
たった3ヶ月でアルバムの曲が完成した。
ここからリミックスなんかがかかるから、最終的にはあと二ヶ月で発売になる。
これがヒットするかはわからない。
でもガオが自信満々だから、きっと売れるだろう。
今なお、彼女の音楽センスは切っ先が鋭い。
安心して彼女の舵取りに乗れる。
俺の手足もだいぶ前に戻ってきた。
潤と智が熱心にリハビリに付き合ってくれたから。
時にはスポーツジムまで行かされた。
「翔は、これから体力つけなきゃいけないんだから」
サウナに入りながら、智がぼそっとつぶやいた。
「え?」
「行くんでしょ?止めても」
「え…あ…」
智はにこっと笑った。
「行ってこいよ…カイロ」
俺はその顔を見ていることができなかった。
涙で前が滲んだ。
「……うん……」
アルバムの発売前に、俺達は集中してプロモーションすることになった。
何もかも初めてで、戸惑うことばかりだったけど。
芸能人って、大変なんだな…
俺、アーティストでよかった…
スキャンダラスな事件に巻き込まれた人ってことで、テレビにひっぱりだこになった時期は参った…
あんな生活してたら、一般の感覚なんてなくなりそうだなと思った。