第11章 Tell Mama
次の朝、小原の報告書を床に散らかしながら読んでいると、雅紀がきた。
侑李も連れている。
今、侑李は雅紀が面倒みている。
そのほうがクスリをやらないからだって。
「しょうさーん」
「はい。侑李、おはよう」
書類を片付けながら、挨拶すると侑李が抱きついてくる。
「もう…ここは和也の場所だからだめだよ?侑李」
「いやー」
かわいく首を振ると、ぎゅっと抱きついてくる。
「いいよ。雅紀。暫くこうしてるから」
「まったく、翔は甘いんだから…」
そう言いながら、雅紀は家事にかかる。
「ごめんな。いつも…」
「なんのことだよ。聴こえねーよ」
掃除機をかけはじめた。
「ごめんな…ほんとに…」
「しょうー」
「うん?」
「あそぼー?」
「なにする?」
「おえかきー」
侑李は和也と違って、身体までは汚されていなかった。
榎本は、中国で侑李を買った。
それほど、榎本は和也に固執しているのだ。
今なお。
まるで。
俺と合わせ鏡。
今だって…
侑李を腕に抱きながら、和也を想っている。
榎本と俺、どこが違うんだ。