第10章 Cry Baby
それから、俺が意識を失っていた間のことを、みんながぽつりぽつりと聞かせてくれた。
最初、ガオは反対した。
けど、俺が聞きたいからと言ったら、ガオは顔を歪めた。
「眠ってたあんたは、”聞きたくない”って言った…」
「え…?俺が?」
「そうだよ!…だから…言わないでおこうと思ったのに…」
「…ごめん…夢、みてたからかな…」
「夢…?」
「眠ってる間、ずっと和也と一緒に暮らしてたんだ…世田谷の家で」
「翔…」
「その夢から覚めたくなかったのかもな」
「バカだよ…あんた…」
「うん…知ってる」
ガオが涙を拭いた。
「じゃあ…最初から話すね…」
一瞬、病室の空気がピーンと張った気がした。
「うん。先生のこと、まずは教えて?」
「先生は…死んだよ…」
殴られたような衝撃がきた。
「死んだ…?ガンで?」
「違う…翔が倒れたあの場で」
「え…?」
「翔が、止めに入ったのは無駄になったんだ…」
ガオやみんなが微笑んだ。
「先生は目的を達成して、自殺したんだ」
「自殺…」
ぽつり、ぽつりと皆の口から、俺のいなかった3ヶ月のことが、語られていった。