第9章 Farewell Song
「おまえ…誰だ…」
「かずなりー」
その少年は、背格好は和也には似ていたけど、全くの別人で。
多分、和也と同じ病気で。
「本当のお名前は…?」
「ゆうり…」
そう答えるとめそめそ泣きだした。
「けいちゃんしんじゃうー…」
そう言って、榎本の身体に縋り付いた。
「ちょっと…待てよ…」
雅紀が頭をかきむしった。
「じゃあ…和也どこなんだよ…和也…」
ゆうりを榎本の身体からはがすと、榎本の襟首を掴んだ。
「おいっ…榎本っ!和也どこやったんだよ!てめぇっ…」
「えー…?へへへへ…和也…あいつ…」
「てめえっ…笑ってねーで、ちゃんと答えろっ…」
「えー…?へっ…和也っ…和也…」
「おいっ…榎本っ…!」
「やめろよ…多分、ラリってっから、まともにこたえらんねーぞ…雅紀…」
「うるせーっ…俊にはわかんねーんだよっ…俺たちがどんな思いしてきたか…こいつのせいでっ…!」
「雅紀っ…」
また雅紀が手を振り上げたから、風間が止めに入った。
「雅紀、私が訊く」
榎本の前に立つと、顎をぐいっと上向かせた。
「榎本…和也どこやったんだ?」