第9章 Farewell Song
小出のじじいとコハラに別れを告げて、喫茶店を飛び出た。
「やっべ、こんな時間だ…」
走って一番街に向かう。
地下のお店に駆け込んでいくと、ちょうど店は開店するところで。
「ガオちゃん、遅い!」
オナベの薫が、私に怒鳴る。
「ごめんごめん!アイツ、中にいる?」
「随分待ってる。早くいってやれよ」
「うん。わりーな」
片手で謝って店内に入る。
ここは私が昔、バイトしてた店。
高級オナベバーだ。
ガオという名前はここでついた源氏名だ。
VIPにあいつを通しておいてくれと頼んでいたから、まっすぐVIPに向かう。
扉を開けると、居心地悪そうにあいつは座ってた。
「待たせたね」
そう言ってソファーに座ると、あいつはほっとした顔をした。
「なんだよ…誰もおまえなんか取って食わねーよ」
そう笑うと、ますます居心地悪そうにした。
「ガオさん…こんなとこやめようよ‥待ち合わせ場所にすんの…」
そう言って、風間は情けない顔をした。
「ばーか。男のくせに…」
そう言ってタバコに火をつける。
「で…?和也のことって?」
「ん…居場所、わかったよ」
「え?」
「上海にいる」