第9章 Farewell Song
翔は、まだ目を覚まさない。
でも、起きている時よりもいい顔してる。
全ての苦しみから解放されたような顔。
その顔を見てたら、目を覚まさないで眠っていたほうが、こいつの幸せなのかと錯覚することもある。
バカ…何言ってんだ…
翔、早く帰って来い。
帰ってきて、和也探そ?
先生、死んじゃったよ…
あんたに全部託して行ったんだよ?
探しにいこうよ…
私達の和也をさ。
スタジオでレコーディングが始まった。
今までのヒット曲はあるものの、翔がいないからテレビでは曲を披露できない。
だから、新しい曲を作る必要があった。
皆でデモを持ちあって、なんとか2、3曲はできそうだった。
「こんなの、翔が目を覚ませばしなくていいのに…」
また智がめんどくさそうに呟いた。
潤が頭を叩いて、また私は笑った。
雅紀はドラムブースに入ったまま出てこない。
楽譜をじっと見て、曲のイメージを膨らましてる。
雅紀、あんたそうやってんのが一番かっこいいよ。
そう思ってたら、携帯が鳴った。
知らない番号からだった。
用心して、出てみる。
『ガオさん?』
「誰…?」
『和也くんの件で…』