第8章 Bye Bye Baby
夏の暑い時期だった。
5月の連休に榎本の実家に行った後から、和也くんの様子がおかしかった。
おかしいとは思いながらも、日々の業務に忙殺されていた時期でもあった。
施設への資金が厳しくなっていたのだ。
自治体から貰える補助金は、さほどでもなく、母体である企業の経営が傾くとあっというまに煽りを食らった。
そんな最中に、夏休み期間に入り和也くんは家へやってきた。
深夜、大学生になった息子が私のところへやってきた。
「おふくろ、和也さぁ…」
「え?」
「虐待受けてない?」
そんな一言がきっかけだった。
すぐさま、寝ている和也くんを起こして身体を見た。
服に隠れて見えない部分に、薄い痣がついていた。
「和也くん、これどうしたの?」
「なんでもありません…」
すぐに服を着ようとする。
「待って!ね、これどうしたの!?」
いつになくきつい口調で問い詰めてしまったら、泣きだしてしまった。
「おふくろ…あのさ…血が付いてるんだよ…和也の下着に…」
「え…?」
青天の霹靂とはこのことで。
慌てて確認すると、お尻が切れていて…
まだそこには少量の鮮血が流れていて。
目の前が真っ暗になった。