第8章 Bye Bye Baby
和也くんを抱きしめながら、困っていると、顔を覗き込んでこういった。
「先生、こまっているですか?」
「ん?そんなことないよ?」
「こまってます…」
「そんなことないってば…」
「ぼくがあのおにいさんといればいいですか?」
下を向いて、呟く。
「んー…そうだね。榎本おにいさんと遊ぶのはいやなの?」
「…いや…」
「なんで…?」
「なくなるからです」
「なにが?」
「うー…うー…」
「どうしたの?和也くん」
「なくなるっ…いやっ…」
「和也くん…」
「でも…先生こまってる…」
そういうと、職員室をとぼとぼ出て行った。
思えば、これがいけなかったのだと思う。
この時に、しっかりと私が抱きしめていたら…
あんなことにはならなかったのかもしれない。
それから2年の月日が流れた。
和也くんは16歳になった。
私の家族も、和也くんの成長を喜んだ。
その頃にはすっかり榎本にも懐いて、今では私以上になっているのではないかと思うほどだった。
長期休暇に、榎本が実家に和也くんを招きたいと言い出した。
ここから、和也くんの人生が崩壊していく…