第8章 Bye Bye Baby
和也くんが13歳の誕生日を迎えた年。
お母様が亡くなった。
同じ日、お父様が交通事故に遭って亡くなった。
偶然の事故なのか、それとも故意だったのかはわからない。
とにかく、和也くんは一夜にして孤児になってしまった。
それ以前、和也くんは不思議なことばかり言っていた。
「おかあさんと、おとうさんはかえってきません」
「なんで?和也くん。お父さんは夕方くるよ?」
「おかあさんも、おとうさんも、かえってこなくなります」
そう言って泣き出す。
お二人が亡くなる前に、何回かこういうことがあった。
こういうときも、和也くんは手がつけられないほど泣いて。
時には暴れて、自傷してしまうこともあった。
なにが彼をこんな風にするのかは、誰もわからなかった。
お父様とお母様のお葬式は、和也くんの地元であげられた。
遠い血縁の方に手を握られている和也くんは、まるで小さな子供のようで。
私の顔を見た途端、その人の手を振り払って私の膝に飛び込んできた。
そのまま、和也くんは私から離れず。
私の喪服には、幾つもの和也くんの涙の染みがついた。
細い肩が震えてるのを見た時、私はこの子を守らなければいけないと思った。
この子を守ってみせると。
遠縁の方は、やはり和也くんを引き取るのを拒否した。
その方を保護者として、和也くんは寮に住むことになった。
手続きは、全て私がした。