第7章 Kozmic Blues
先月、下腹部に異常を感じ、病院を受診しました。
末期の子宮がんに冒されていました。
発見が遅かったので、余命は半年あればいいほうだそうです。
私は医師より、その宣告を受けて、真っ先に考えたのは、和也くんのことでした。
和也くんを取り戻したい。
でも、和也くんが帰ってきた時、戻る場所がなければいけません。
櫻井さん。
あなたは今でも和也くんを愛していますか?
愛しているなら、今すぐベランダへ出てきてください。
私は、あなたの元に和也くんを戻すお手伝いをします。
もしもあなたがベランダへ出てこなかった時は、諦めます。
櫻井さん。
あなたの気持ちは、あの頃のままですか…?
床に落ちる便箋を見つけたのは、雅紀だった。
その時、既に翔は部屋に居なくて。
玄関の鍵も開きっぱなしで、どこかへ行ったまま帰ってこないと、雅紀から泣きながら電話があって。
俺はそのまま家を飛び出して、翔のマンションへ行った。
翔の部屋でこの手紙を読んだ時、とっさに今日起こった事件を思い出した。
養護施設職員の女性による殺人事件…
あれは和也の「先生」なんじゃないのか?
「翔…翔はどこ行ったんだよ!?」
「知らないよぉ…わかんないよぉ…」
雅紀はまたクスリをやってた。
「このジャンキーがっ」
俺は雅紀を殴り倒して、ガオに電話をかけた。