第7章 Kozmic Blues
「雅紀…あれ、どこやった?」
翔が俺の背後で呟く。
気怠い身体を返して、翔の方に向き直る。
「なんのこと?」
「和也のカバン」
「ああ…クローゼットの右側にはいってるよ」
そういうと、翔はベッドから降りていった。
スプリングの軋む音を聞きながら、俺はまた目を閉じた。
「…翔、服ぐらい着なよ?」
そう言ってみたけど、返事はなくて。
仕方なく起き上がって、床に散らばったパジャマを拾い上げる。
クローゼットの前に座り込む翔にそれを持って行くと、俺を見上げて微笑んだ。
「お前が着ろよ」
「だめだって…翔」
「わかった」
翔が受け取ってくれて、ほっとする。
ほうっておくと、翔は自分のことなんて二の次で。
和也との思い出の中に行ってしまう。
今だって、和也のカバンから思い出をとりだして、遊んでるんだ。
翔が安心した顔をするのはこの時だけで…
この5年、俺はこの遊びを止めることができなかった。
俺はキッチンに行くと、引き出しからパイプを取り出した。
白い粉を炙って吸い込む。
頭を振って、その瞬間だけ全部忘れる。
もう、忘れちまえよ…翔…