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As well be hanged for .....

第7章 嫉妬は秘密に 紅茶は一緒に 後編




セバスチャンはシエルに向かって一礼し、汚れた服を洗濯しに部屋を後にする。

シエルは息を付いて、お気に入りの一人がけソファーへ身を投げる。
三人がけのソファーは眠るウリエが占領している。

「甘え。」

ぽつりと呟くと、妙にその言葉が今の自分を表現しているようでくすぐったい。
ファントムハイヴ…と、口だけを動かし、ファミリーネームを呟いてみる。
シエルは指に嵌めている指輪に触れる。
これは代々ファントムハイヴ家当主が手にしてきた物。
しかし、自分の次の代など生まれない。
赤の他人に託すような物ではない。

自分は悪魔だ。
他人の魂を啜る。

シエル・ファントムハイヴは今ここに存在し得るものなのだろうか。

ときどき長い夢を見ているのではないかと錯覚に陥る。
セバスチャンやウリエも妄想で、彼らが漏らす言葉は妄言なのではないか。
自分で、自分の力でこの夢を脱さなければ永遠にこの夢の中に囚われたままなのではないだろうか。

「ぼっちゃん。紅茶をお持ちしました。」

これも、今自分が準備してほしいと描いたからだろうか。
このリビングの先の廊下は何もない虚無なのではないだろうか。

「どうされました?」

セバスチャンに心配してほしいと願ったのだろうか。

「ぼっちゃん?」

話しかけてくるセバスチャンは、僕の、妄想?

「妄想ではございませんよ。」
「え?」
「貴方は確かに悪魔ですが、この世界に存在する一つの自意識として成長なさっているのではございませんか?」
「成長?」
「彼女を見つけ、恋し、ご自分の手で守りたいと初めて思えた。」

シエルの心を直接覗いたように、セバスチャンはシエルの心を探り当てる。
ただただ長年彼に仕えて来た訳ではない。


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