As well be hanged for .....
第6章 嫉妬は秘密に、紅茶は一緒に 前篇
一家惨殺事件は犯人をあぶり出す事が出来ず数日が過ぎていた。
警察も女王サイドもピリピリしているさなか、ロンドンではまた新たな問題が起きる。
「もう!次から次へと!」
ウリエの手に握られているのは、女王からの手紙と今朝の朝刊。
彼女が座るソファーの向かいではテレビの向こうのアナウンサーが、中継です!と騒ぎたてている。
「朝から騒ぐな。」
若干のヒステリーを起こしているウリエの横では、一人掛けのソファーに優雅に腰掛けてティーを楽しんでいるシエル。
セバスチャンはそんなウリエの髪を結っている最中だ。
「一家全員殺人事件の次は、子供誘拐事件よ?馬鹿にしているとしか思えないわ。」
「もし、今回も同じグループの犯行だとすれば。警察への挑戦状としか思えないのは確かだな。」
「頑張るべきは私じゃなくて、警察だと思うの!」
セバスチャンはウリエの髪を結い終わると、彼女の手にぎゅっと握られている紙束を優しく抜き取り、カリカリしている彼女を宥める。
「お嬢様の言う事ももっともです。しかし、お嬢様がカリカリしていては犯人の思うつぼかもしれませんよ。」
この時ばかりは、落ち着いてテレビを睨みつけている彼を見習ってください。とセバスチャンはウリエを促した。
大きなため息をついてようやく落ち着いたウリエは、もう一度新聞を手に取り読み返す。
「だが、子供を誘拐していると言うのに、犯人達から一切要求は無いようだな。」
「えぇ。警察も動くに動けないんでしょうね。」
シエルはやかましく騒ぎたてるテレビを消す。
ようやくいつもの静けさが戻ってきたリビングに、天気のいい朝らしく小鳥の声が聞こえてくる。