As well be hanged for .....
第5章 砂糖は多めに 塩は少なめに 後篇
ファイルの次のページには、当時の現場写真が何枚もファイルされている。
生々しい現場の写真。もちろん、残されていた右足の写真もある。
開かれたページには、映画やドラマで使用する血糊の様なものではなく、本物の血液が、多量に広がっている写真。
誰が見ても助かる量の血液の流出じゃないと思うだろう。
「他の身体はここに書かれている通り、海に捨てられたんだろう。潮に攫われもう見つかりはしない。」
「シエル……。」
ウリエの考えも分からないでもない。だが、ウリエの父親はただの人間だ。
悪魔や死神の類ならいざ知らず、人間がこの量の血液を流して海に投じられて生きている方が奇跡だ。
でも、もし、人間ではないのなら?
それにしても、元番犬で、番犬の恐ろしさを知っている人物が、女王に目を付けられるような事をするのか?
それも、自分の娘と対峙するような形になることを承知で?
「シエル。私もたくさん考えたの。」
シエルとセバスチャンの手を引いてショッピングをしている間ずっと。
もし義足の男が父親だったら?
どうして、自分の前に戻って来てくれないのだろうか。
どうして、この町を汚すような事をしているのか。
どうして、なぜ?
そんな事ばかりが頭をぐるぐる回っていた。
「ウリエ。それは義足の男を捕まえたら分かる事だ。警察も動いているんだろう?僕らのやるべき事は女王の憂いを払う事だ。」
シエルは眉間にしわを寄せたままのウリエの額を指でぐりぐりと伸ばす。
「お前の願いは真実を明らかにする事だ。僕は協力すると言った。」
「うん……真実が明らかになった暁には、私の魂はシエルが食べちゃうんでしょう?」
「あぁ。そう言う契約だからな。」
反故には出来ないぞ。とシエルはウリエに再度忠告する。
しかし、ウリエは自分の魂が喰われてしまうと言うのに、クスクス笑う。