As well be hanged for .....
第15章 答えは甘美に 制裁は憧れに 後編
「貴方の飼い主は、私のお父様?」
「そ、そうです…私は貴女のお父上、私は旦那様の犬です。」
「うーん。かもしれない。で済んでいた事が現実になると、さすがに吐き気がするわ。」
「そうは見えませんよ?お嬢様。」
もっと言えば、俄然やる気が出て来たようにも見えます。とセバスチャンが、彼女の後ろで笑う。
ウリエは、セバスチャンの言葉に呆れ気味に笑い返し、自分も随分女王のしつけが行きとどいた犬だなと、笑う。
「トーマス。」
優しく、強い言葉で命令する。
「ファシル・フェンベルグに、私が会いたがっているから連絡を頂戴。と伝えなさい。」
彼女のエメラルドの瞳がギラギラと輝く。
父親と似ているその目は、トーマスを頷かせるには十分すぎるほど、支配的で、悪魔的で、魅力的だった。
無様に手足をばたつかせ、ウリエの言葉を主人に伝えるために逃げて行ったトーマス。
その後ろ姿に思わず笑ってしまった事を、ウリエは少し後悔していた。
自分だって女王に引き綱を握られた犬ではないか。と。
「セバス。トーマスの跡を追えるかしら?」
「もちろんです。ですが、その前にお二人をタウンハウスへお送りします。」
ウリエの前で、優雅に一礼して見せる悪魔。
ウリエの横で、彼女の手を優しく握る悪魔。
「勘違いするな。悪魔はスマートで紳士だ。」
「うん。私の大好きな悪魔は。って注釈が付きそうだけれどね。」
「馬鹿言え。」
「うふふ。」
少し照れてウリエから顔を逸らすシエルの頬に、ちゅ。とキスを送る。