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As well be hanged for .....

第15章 答えは甘美に 制裁は憧れに 後編




カラスのように真っ黒な外套を羽織り、もう慣れっこになったセバスチャンの両腕に身を預け、肌寒い月の下へ繰り出す。

トーマスのアパートが見えるお決まりの路地の影。
いつものように双眼鏡を覗いて目を凝らすが、今日は部屋に明かりが灯っていなかった。

「いないわ。」
「セバスチャン。」
「はい。」

いつもと違う行動。
これはチャンスかもしれない。とウリエとシエルは、スンスンと犬のように空気の匂いを嗅ぐセバスチャンに視線を注ぐ。
獲物を捕捉したセバスチャン。
二人はセバスチャンに抱かれ、トーマスを追う。

「彼は車に乗っているようです。随分動きが早い。」
「車?」
「奴は車なんか持ってないぞ。」
「あぁ、あれですね。」

電柱や屋根を足場に、身軽に飛んで走るセバスチャンの視線の先。
ポツリ、ポツリとしか車の走っていない大通りには、巡回中にも見える警察車両。
セバスチャンは付かず離れず車を追う。
脇目を振らず一進に走り続けたパトカーは、段々とロンドン郊外へとそのヘッドライトを向ける。

「この道…私の本邸がある道よ。」
「お前の本邸だけか?」
「牧場とかもあるわ。けど、他に家やパトカーが巡回に来るような物はないと思う…。」

フェンベルグの本邸にはずっと帰っていない。
父が亡くなり、自分と姉が女王の番犬を継いでから、一度も。
時折母に会いに行く事はあっても、母はいつも本邸から少し離れた別邸で生活している。
こちらに来る事があっても、本邸に寄ることなんて一度もなかった。

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