As well be hanged for .....
第13章 閑話休題 2
「トーマス。今日もいつものを貰って来てくれ。」
「わかってるよ、ママ。」
トーマスと呼ばれた青年は、表紙も泥で汚れ、中も切れ切れになって読める所の少ない本を、英国紳士のまねごとをしてパタリ。と閉じ立ち上がる。
足元に纏わりつく弟妹たちに留守番をたのみ、唯一穴の開いてないポケットに入っている日銭を握りしめて、いつもの所へ赴く。
「らっしゃい。」
「おじさん、いつもの。これで買えるだけ。」
「ほぅ。昨日は随分実入りが良かったな。」
「まぁね。珍しくいい仕事だったんだ。」
数枚の汚れきった硬貨を、ガラクタで作り上げたカウンターに大事に置く。
トーマスの向こう側の男は、掌に収まるほどの小さな乾燥した葉っぱを一枚彼の手に渡す。
「一枚も!」
「今後もごひいきに。」
「ありがとう!」
またなー!とはっぱ売りの男に手を振ってトーマスは駆け足で、次の場所を目指す。
葉っぱは、ずっと前に拾ったビニール袋に入れて、落とさないようにズボンのゴムに挟む。
トーマスが持っている唯一のいいゴムだ。
自慢である。