第6章 ♣️そのマンション、私が管理して差し上げましょう
105号室 松本潤
この、松本潤。
多分彼が一番得体が知れないのではないかと、私は思う。
毎日大抵夕方5時頃出かけては、帰って来るのは朝9時頃。
しかもなんとも眩いばかりに輝いた服を身に付け、大きめのサングラスで顔の半分を隠し、髪は…ポマードだろうか、オールバックにガチガチに固められている。
何度か声を掛けようと試みたが、不気味なまでに不機嫌な様子に、些か躊躇してしまう。
私は彼の私生活を知りたくなった。
だが、彼の部屋を尋ねる“理由”がない。
私は散々考えた結果、あることを思い出した。
ピンホーンピンホーン…ガチャッ
「なに?」
「あの私は管理人の二宮ですが、ちょっと松本さんにお話が…」
「何の?」
全く不機嫌極まりない口調だ。
「実はですね、大家さんからの、事付けをお伝えしたくて…」
私が“大家さん”の名前を出した途端、その顔に一瞬陰りが見えた。
「ですが、ここではちよっと…」
私はドアの隙間に身体を、割り込ませ、ドアが閉められるのを防いだ。
「人目もありますし…。良かったら中でお話させていただきたいのですけれども」
私は手に持った帳簿をチラリと松本さんに見せた。