第6章 ♣️そのマンション、私が管理して差し上げましょう
私と櫻井さんは手分けをして、空室になっていた隣室へと荷物を運び込んだ。
全ての作業を終えると、外はもうどっぷりと日が暮れていた。
「思ったより時間がかかってしまいましたね?」
肩で息をヒューヒューしている櫻井さんに声をかけた。
「でも、これで苦情は来ませんよね?」
そうですとも!
私は大きく頷いて見せた。
「あの、ちょっとお尋ねしたいのですが、櫻井さんのお仕事は…?」
「あぁ、俺の仕事…。なんて言ったら分かり易いのかなぁ…」
顎に手をかけ、う〜んと首を捻る櫻井さん。
「い、いえ、無理にお答え頂かなくても…。ただ、日に何度も外出なさるので、気になっただけですから」
簡単に言えない職業ってことは、余程怪しい仕事なんだ、と私は理解した。
これ以上探るのは無理か…
「俺、実は所謂“ヒモ”ってやつなんですよ。だから、1日に何人も人と会うんです」
まさか“ヒモ”とは…
思ってもいなかった答えに、私は心底驚いた。
「ほほぉ、お盛んなんですね?」
な、何を言っているんだ、私はっ!?
「ええ、まぁ…。あの…管理人さんも、なってくれます? 俺の…」
その後櫻井さんと私は、言うなれば“需要と供給”の関係になった。
それからというもの、櫻井さんの外出はめっきり減り、その代わりに管理人室に私を尋ねて来ることが多くなった。
フフ…
櫻井さんはもう私の“虜”になったようだ。