第6章 ♣️そのマンション、私が管理して差し上げましょう
櫻井さんは暫らく考え込み、
「驚かないで貰えます?」
そう言った。
私は、「勿論」と極上の微笑みを浮かべて答えた。
「じゃ、どうぞ…」
ゆっくり開かれたドアの向こうの光景に、私は絶句した。
「ほら、やっぱり驚いた」
櫻井さんが苦笑を浮かべ、濡れた頭をポリポリ掻いた。
「い、いえ、とんでもない。さ、始めましょう」
とは言っても、最早どこから手を着けて良いのやら…
私は考えを巡らせた。
そうだ!
「すぐに戻りますから、ちょっとお待ち下さい」
私は清掃道具を一旦櫻井家に置き、管理人室へと急いだ。
キーボックスから206号室の鍵を取り出し、再び櫻井家へと足早に戻った。
「さ、櫻井さん…はぁ…私に…はぁ…良い考えが…はぁ…」
※誤解の無い様、先にお伝えしときますが、決してあんなことやこんなことをしている訳ではございませんので、あしからず…
私は手にした鍵で206号室のドアを開けた。
随分と人が住んだ様子のないその部屋は、ほんの少しカビ臭く感じた。
「私考えたんですよ。一旦この部屋に、櫻井さんのお荷物を運び込むんです。そしたら、櫻井さんのお部屋、片付きますよね?」
私の提案に、櫻井さんが手をポンと叩いて賛同した。