第6章 ♣️そのマンション、私が管理して差し上げましょう
205号室 櫻井翔
この”櫻井翔”という男。
外見もなかなかのハンサムボーイで、おまけにとてつもなく礼儀正しい。
好青年とは、まさにこの男のためにあるような言葉だ。
だが一つ問題がある。
この男、何かと行動が意味不明なのである。
一日に何度も出かけては帰宅し、またその数分後には外出。
それを一日の内、何度も繰り返す。
ご丁寧に衣装やアクセサリーまで変えてね。
その行動は最早”イミフ~⤴”以外の何物でもない。
ピンポーン
「はい、はい」
ドアの隙間から顔を覗かせた櫻井さんの髪は、雫が落ちるほど濡れていた。
シャワー中だったのだろうか?
「あの私管理人の二宮ですが。今ちょっとだけお時間宜しいでしょうか?」
「何でしょうか? あまり時間がないので、手短にお願いしますね」
突然の訪問にも笑顔で対応とは、やはりこの男好青年以外の何物でもない。
「はい。実は櫻井さんのお部屋から、異臭がすると近隣住民から苦情がでておりまして」
好青年が顔が一瞬強張った。
「で、ですね、なんなら私がお手伝いしますので、異臭の原因を究明しては如何かと…」
私は手にしていた清掃道具を、櫻井さんにチラリと見せた。