第6章 ♣️そのマンション、私が管理して差し上げましょう
大野さんは手先がとても起用らしく、そんな大野さんの手伝いの甲斐もあって、作業は順調に進んだ。
「はぁ、出来ましたね。これで虫も入って来れないでしょう」
額の汗を腕で拭った。
それを見ていた大野さんが、おもむろにタオルを私に差し出してきた。
「良かったら使って?」
私は礼を述べ、遠慮なくそれを拝借した。
ほのかに甘い香りがする。
これが大野さんの匂いか…
タオルで汗を拭うふりをして、鼻をクンクンさせた。
「あ、ごめん。…今更なんだけど、それ3日目だった」
3日目でも何でも構いませんよ…って、何が3日目?
「と、言われますと?」
不安げな表情を浮かべる私に、大野さんは何事もなかったようにまたフニャっと笑って、こう答えたんだ。
「今日が洗濯予定日? だって面倒じゃん?毎日洗濯するのって。だから、今日が3日目なの」
あぁ、そういうことですね…って、洗ってねぇのかよ!
「で、では、これが、このタオルが、お風呂上がりの大野さんの全身を…?」
ウンウン頷きながら、大野さんは鼻歌交じりで網戸を元の位置に戻した。
「おぉ、完璧じゃん!」
子供の如く歓声を上げる大野さんに、私は深々と頭をさげ、部屋を後にした。
手にはしっかりとタオルを握ったままね。
後日、大野さんからの贈り物が管理人室に届いた。
あの時の絵?
キャンバスに描かれていたのは、紛れもなく私の裸体で、大事な部分には…あのタオルが巻いてあった。
私はその絵を管理人室の壁に飾ることにした。