第6章 ♣️そのマンション、私が管理して差し上げましょう
部屋の中は意外にも綺麗に整頓されている。
うん、感心感心。
「あ、大野さんこれは?」
壁に凭せ掛けられた裏返しになったキャンバスに目を止めた。
画家…なのか?
「あぁ、それね…。まだ描きかけなんだけど、出来たら管理人さんに上げるよ」
これを私に?
「きっと喜んで貰えると思うんだ…」
私は絵などに興味はないが…。
しかしせっかくくれるというものを無下に断ることもできず、
「ありがとうございます。楽しみに待ってますね」
最高の笑顔をお返しした。
それにしても、見れば見るほど殺風景極まりない部屋だ。
生活する上で最低限必要な物すら、揃ってはいなんじゃないだろうか?
私は部屋の隅々をくまなくチェックしながら、作業に取り掛かるべくカーテンを開けた。
窓を大きく開けると、それまでの湿っぽい空気が、新鮮な空気と入れ替わるのが分かった。
網戸を外し床に置くと、破れた網を取り除いた。
「ちょっと手伝って頂けませんか?」
二人で新しい網の縁を抑え、慎重に窓枠に嵌め込んでゆく。
なんて綺麗な指先なんだ…。
男らしいのにしなやかで…。
あの指に触れられたら…?
イケナイイケナイ…。
私は作業に没頭することで、邪な感情を抑え込んだ。