第6章 ♣️そのマンション、私が管理して差し上げましょう
201号室 大野智
このマンションで勤務を始めてから約半年。
私はいったい何度この”大野智”という人物に会っただろう?
私の記憶では、多分片手で足りるほどだと思う。
それぐらい”大野智”は部屋から出ない。
ここ最近の記憶を辿ってみても、一週間は姿を見ていない。
私が勤務を終えてから外出しているのか、それとも…
ピンポーン
ピポピポピポピンポーン
ドンドンドンドン…。
「大野さーん、私管理人の二宮です。お留守ですか?」
………………………ガチャ
「…何? 俺に用事?」
生きてた…。
私はホッと胸を撫で下ろした。
「いえ、あの外から見たらですね、大野さんのお部屋の網戸が破れてるようだったんで、ちょっと修理をと思いまして」
決して怪しまれないよう顔には満面の笑みを浮かべ、手にしていた修理用の道具をチラッと見せた。
「あぁ、そうなの? 俺、全然気付かなかった…」
そう言ってフニャっと笑った大野さん。
なんだよ、可愛いじゃねぇか…。
「お邪魔しても宜しいでしょうか?」
どうぞどうぞ、と大野さんはすんなり俺の侵入を受け入れた。