第5章 ♠ラップでウィンナー売っちゃうぜ!
「中丸君、君は間違っている。タコさんの足は8本しかない。これは常識中の常識なんだ。だが、君のタコさんには、何本の足があるんだい? 申し訳ないが、俺には数えられないんだが…」
ある意味、器用っちゃあ器用なんだけど…
今はそれを求めてはいないんだよ、中丸君。
「あぁ、そう言われて見ればそうですね? いやぁ、勉強になります、先輩!」
せ、先輩、って…
案外可愛いとこあんじゃねぇか…
「さぁ、そろそろ忙しくなる時間だ。君の作ったクラゲウィンナーをこのホットプレートの中に入れたまえ」
了解、とばかりに敬礼のポーズをとる中丸君。
ウンウン、なかなかやる気が漲っているようだね?
中丸君の作ったクラゲウィンナーが鉄板の上に綺麗に並べられた。
ジュージューと音を立てながら、クラゲウィンナーが鉄板の上でダンスを始めた。
よし、今だ。
俺は中丸君に取っておきのアイテムを手渡した。
団扇だ。
キョトンとした表情で団扇を眺める中丸君に、俺はお手本とばがりに団扇を使って見せた。
「ほら、こうするんだ。こうすることによって、店内にウィンナーの焼ける匂いが漂って、客足が自然とコチラを向くんだ。さぁ、君もやってご覧」
納得した様子で頷き、超ハイスピードで団扇を扇ぐ俺の横に立った。
中丸君が緊張した面持ちで深呼吸を一つした。