第5章 ♠ラップでウィンナー売っちゃうぜ!
「………らい。
………おい、櫻井!」
だ〜れだよ、馴れ馴れしく俺を呼ぶのは?
「えっ、あっ、はいぃ〜!」
そこに立っていたのは、派遣先の担当教官の松岡さんと…誰だ?
「コイツ新人なんだけどぉ、お前面倒みてやってくんねぇかなぁ?」
松岡さんが隣を、親指でクイクイッとした。
フン、なんだコイツ…
ヒョロッとして…多分顔の造りはまあまあなんだろうが、幸薄そうな湿気た面構えだ。
「あ、あの、中丸って言います。宜しくお願いします」
中丸と名乗った男は、頭をポリポリかきながら、軽く頭を下げた。
全く最近の若者は、礼儀がなってない。
会釈と言うのはだな、
「櫻井翔です。こちらこそ宜しくお願いします」
俺は腰を90度に折り曲げ、深々と頭を下げた。
そして松岡さんの手前、仲良しアピールの為、右手を差し出し、中丸君とやらに握手を求めた。
「あ、あぁ、どぉも…」
中丸君とやらは、またしても頭をポリポリしながら、右手で俺の握手に応えた。
「んじゃま、頼むわ」
俺達が握手を交わしたのを確認し、松岡さんは手をヒラヒラさせながら去って行った。
「中丸君…だったかな? 研修は受けて来たんだよね?」
俺の問いかけに、
「えぇ、まぁ一応…」
と、なんとも曖昧で頼りない口調で答えた。