第1章 ♥オイラは美術教師
翔side
大野先生の少し明る目の髪が、開け放った窓から差し込む日差しに透けて、とても綺麗で…
「お〜い、櫻井く〜ん?」
すっかり見蕩れていた俺は、突然名前を呼ばれて我に返った。
いつの間にこの人移動したんだ?
目線の先に、大野先生の姿はもうなかった。
それにさ、“〜”付けるの止めて欲しい…恥ずいから(〃ω〃)
「あ、は、はい」
「ここ、座って?」
絵の具が染み付いた木製の作業机に、スケッチブックやら鉛筆やら用意しながら、周りに置かれた丸椅子を指差す大野先生。
「はい。ここでいいですか?」
冷たく硬い丸椅子に腰を下ろした。
「じゃあ、俺はここ座ろっと」
大野先生は俺の正面の丸椅子に、ニコニコしながら腰を下ろした。
向かい合って座る俺達の間には…石膏で出来たイケメンが一人?
こっちを向いて、無言で佇んでいる。
「あの、コレを描くんですか?」
俺は手にした鉛筆で、ソイツの顔を指した。
「そうそう、チャールズくんが今日のモデルさん♪」
チャ、チャールズ?
この人、こんなモンに名前まで付けてんのか?
芸術家には一風変わった人が大いとは聞いたことがあるが、大野先生も多分に漏れず、ってことか…
俺はスケッチブックと鉛筆を手に、チャールズさんとにらめっこを始めた。