第1章 ♥オイラは美術教師
「……先生」
ん?
誰だよ、俺の眠りを邪魔すんのは…
「大野先生、起きてください」
はぁ…
折角イイ夢見てたのに…
重い瞼を開けると、キリッとしたイケメンの生徒が俺を見下ろしていた。
誰だっけ?
「櫻井です」
櫻井…あぁ、俺が呼び出したヘタッピな絵を描く生徒だ(^_^;)
「んじゃ、美術室行こっか」
俺は一つ伸びをして、美術室の鍵を手にした。
長い廊下を、櫻井を後ろに従えて前を歩く。
はぁ、しかしなんでこんな遠いかなぁ、美術室は…
美術室は職員室のある北校舎と、渡り廊下を挟んで南校舎の一番奥にある。
職員室からは最も遠い場所に位置するわけだ。
しかも4階って…
漸く目的地に着いた頃には、もう息も絶え絶えの状態。
こんな事なら、最初っから美術室に呼び出せば良かった、と思ったところで今更だ…
鍵を開け、カラカラと戸を開けると、独特な匂いが廊下にまで漂ってくる。
正直、絵を描くのは好きだけど、この匂いは好きになれない。
「櫻井〜、窓開けて?」
「はい」
と、教科書通りの返事をし、櫻井は銀縁眼鏡をクイッと指で持ち上げた。
窓を全て開け放つと、篭った匂いが一気に外に流れ出した。
「空気入れ換えたいから、ちょっと寒いけど我慢してね?」
ブルッと身体を震わせた櫻井に言った。