第4章 ♥ギラついたアクター
………一時間経過
待てど暮らせど、新人さんとやらは現れない。
スタッフが何度か連絡を入れるが、コールはするものの電話に出る気配もない。
流石の監督も、椅子にドッカリ座って腕を組むと、イライラした様子で貧乏揺すりを始めた。
「だから新人なんて使いたくねぇんだよ! …ったく」
さっきまでの“おねぇ言葉”も、最早何処へやら、と言った感じだ。
当然俺もイラつきはしたが、監督の怒りの矛先が周りのスタッフに向けられているのを見て、グッと堪えることにした。
俺はスターだ。
仏の心を持ったスターなんだ。
って、自分に言い聞かせながらね。
でもそうしてる内に、本当に仏心が沸いてくるから不思議なもんだ。
イライラを隠せない監督の背後から抱きつき、耳元に口を寄せた。
「俺は今、虫の居所が悪いんだ。あっちへ行ってろ、潤」
“潤ちゃん”なんてさっきまで呼んでたくせに、えらい変わりようだな…
俺の手を振り払おうとした監督の手をギュッと握り締めた。
「俺、監督にお願いがあるんですよね? 聞いて貰えると嬉しいんだけどな〜」
思いっ切り甘い声で囁いてやった。