第21章 銭湯へGo!
チャッチャラ~、双眼鏡!
これなら、例えどんなに遠く離れていても、間近に見ることが出来るではないか!
私は早速双眼鏡を目に当てた。
どれどれ?
キュン♥♥
レンズ越しに見る彼は、やはり美しい。
だが、彼が持っているあの大量のボトルは一体?
も、もしや水素爆弾⁉
いよいよ私にも最期の時が…って、こんな格好で最期を迎える訳には…。
「あの~、もし?」
私は思い切ってギリシャ彫刻に声をかけた。
「…なに?」
「そ、そのボトルは一体何ですか?」
ギリシャ彫刻の視線が、私とボトルを行ったり来たりする。
「これ? これは”フレグランス”だよ。気分によって風呂の香りも変えたいからね?」
あ~ぁ、なるほど…
って、それだめでしょ!
「あの、それはちょっと他のお客様もいらっしゃるようですし、出来ればご自宅のお風呂でお試し願えませんか?」
私の言葉に、ギリシャ彫刻の表情が一気に曇る。
「そっか…ダメなのか…」
「どうもすみませんねぇ…」
ギリシャ彫刻が床に並べたボトルを乱暴に鞄の中に放り込む。
そして最後の一本を手にした時だ。
「なんて日だ!」
ギリシャ彫刻の叫びが脱衣所に響き渡った。
すまない…
出来ることならば私だって…
ギリシャ彫刻と一緒に湯船に浸かりたい欲望を、私は必死に抑え込んだ。