第17章 介護ってなあに?
山「私達はこういった現場に数多く立ち会っていますが、やっぱり何度見送っても慣れないものなんです」
確かにそうだ。
こういった施設に入所するってことは、ここで最期の時を迎えるのを約束されたも同然。
俺達の目の前で眠る五月さんのように…
それから程なくして五月さんの家族が施設へ駆けつけた。
シンとした施設内に響く嗚咽と、繰り返される謝罪の言葉。
そんなに悲しいのなら、そんなに謝るぐらいなら、どうして五月さんの最期を看取ることをしなかったんだろう?
そこには俺達には分からない、”事情”ってのがあるんだろうな…
五月さんのご遺体がストレッチャーに乗せられ、葬儀場の車へと乗せられた。
家族が職員に頭を下げる中、ゆっくりと閉じて行く車のドアを、ぼんやりと見つめていた。
そして五月さんを乗せた車が出発した。
俺達は手を合わせてそれを見送った。
山「お疲れになったでしょ? 少し休んでてください」
俺達は山田さんの配慮で空き部屋の一室で仮眠を取らせて貰うことにした。
ベッドに横たわると、どっと疲れが押し寄せてきた。
疲れた…
明るい日差しに瞼を持ち上げると、もう朝になっていて…
慌てて部屋を飛び出した俺達を出迎えてくれたのは、深夜に起きた悲しい出来事など気にもしない、昨日となんら変わらない光景。
「なんか虚しいね…」
智君がポツリ呟く。
「でもこれが現実なんだよね」
「切ないね…」
こうして俺達の体験は終わった。