第17章 介護ってなあに?
最期の診察を終えた医師が部屋を出てくる。
俺達に軽く頭を下げ、足早に立ち去る背中を、俺達は無言で見送るしか出来なかった。
山「良かったら五月さんに会ってあげて貰えませんか?」
医師の後を追うように五月さんの部屋から出てきた山田さんが言う。
「智君、どうする? 会ってみる?」
隣で目に涙をいっぱい溜めて俯く智君に問いかける。
「オイラ…会いたい…」
シャツを握った手に、ギュッと力が籠る。
「そうだね、会いに行こうか?」
無言で頷く智君の手を引いて、俺達は五月さんの部屋へと入った。
山「五月さん、綺麗なお顔してるでしょ?」
山田さんの言う通り、五月さんはとても穏やかな顔をしてそこに眠っていた。
「ばあちゃん、約束したじゃんか…」
智君の目から堪えきれずに涙が零れる。
俺はその肩をそっと抱き寄せた。
そしてふと視線をベッドの上に向けた。
「智君、あれ…」
智君が涙で濡れた顔を上げ、俺の指さす方に視線を向けた。
そこには一枚の”絵”が貼られていた。
「これって…オイラの…?」
職④「あぁ、これですか? 五月さんね、凄く嬉しそうに私達に見せてくれたんですよ? あんまり大事そうに持ってらしたから、ここに貼っておきましょうね、って…」
そう言って職員の人は声を詰まらせた。