第17章 介護ってなあに?
山「五月さんの部屋だわ? どうしたのかしら?」
山田さんが席を立ったのを見て、俺は智君の肩を揺すった。
「五月さん、何かあったみたい。俺ちょっと見てくるけど、智君どうする?」
「オイラも行く…」
眠い眼を擦りながら、俺の横をトボトボと歩く智君。
口には出さないけど、五月さんのことが気になっているのは、俺にも感じ取れた。
五月さんの部屋がある2階に上がると、突き当りの部屋から明かりが零れていた。
そしてバタバタと職員が入れ代わり立ち代わり動き回っているのが見て取れた。
「あの、何があったんですか?」
職④「五月さんがね…。ごめんなさい、後でゆっくり…」
そう言った職員の目が、心なしか潤んでいるようにも見えた。
もしかして…
俺の中に考えたくない言葉が過る。
「翔君、違うよね? だってあんなに元気だったもん」
職員の言葉から察したのか、智君の手が俺のシャツの裾をギュッと掴む。
「オイラ、約束だってしたよ? お絵かき教室通うって…」
智君の声が震えた。
程なくして駆けつけた提携医院の医師が、職員と共に五月さんの部屋へと入っていった。
俺達はその光景を、ただじっと廊下に立って見ていることしか出来なかった。