第17章 介護ってなあに?
皆状態によって違うのかもしれないが、同じように高額な利用料を払ってここに暮らしている。
山田さんの言う通り、”平等”の精神が正しいのだとしたら、あの泥棒呼ばわりされた三郎さんはどうなる?
見たところ”認知症”の気は、少なくとも俺には感じられない。
至って正常な判断が出来るんであれば、”泥棒”と呼ばれたことに対して、少なからず傷ついているんではないか?
それを、相手は”分からない”から”忘れてしまうから”で片づけてしまうことが、果たして”平等”と言えるのだろうか?
O「なんか、あのじいちゃん可愛そうだ」
智君の意見が尤もだと思う。
一度心に受けた傷は、そう簡単には癒せやしないだろうから。
一通りおやつが終わると、簡単な清掃が始まる。
俺達も職員の人に付いて、テーブルを拭いたり、床のモップ掛けなど、自分たちが出来ることを進んで行った。
俺は使用済みの食器洗いを買って出た。
およそ30人分の食器を洗うのは、俺が慣れていないせいもあるのかもしれないけど、大変な仕事だ。
これを施設長を含め、通常僅か6人の職員でこなしているんだから、大変な重労働とも言えるだろう。
しかも仕事はこれだけじゃないし…。
ここで働く職員の本来の仕事は”介護”なのだから。