第17章 介護ってなあに?
?「この、泥棒! 返せ!」
突然響き渡った怒声に、俺達は揃って視線を向ける。
職②「二美さんどうしたのぉ?」
すぐに職員が駆け寄り、二美さんの背中を撫でる。
二「あのね、このおじさんがね、アタシのお菓子を盗ったの」
つい数秒前まで鼻息を荒くしていた人とは全く別人の、幼女のように訴える二美さん。
とても同じ人だとは思えない。
職②「二美さんたら、さっき美味しい美味しいってお菓子食べてたじゃない? それに三郎さんはそんなことしないよ? ね、三郎さん?」
三「わしゃそんなことはせんよ…」
二「でもぉ…」
余程お菓子が欲しいのか、二美さんは尚も駄々をこねる。
N「変わりのお菓子上げたらダメなんですか?」
それで事が丸く収まるなら、それが最善策だと思うが…
山「一人に許してしまったら、他の人も、ってことになりますよ? もしもあなた達5人の内、誰か一人だけがいい思いをしていたとしたらどう思いますか? 狡い、って思いません?」
そうだよね。
俺達5人の内の誰かが、って思ったら…
嫉妬だとか妬みとか、醜い感情が芽生えるかもしれない。
でもそれは、俺達がまだ思考も記憶力も衰えていないからであって…
山「分からなければ…どうせ忘れてしまうのだから…、そういう考えは私達にはありません。どんな人にも”平等”に、と思って接してますから」
綺麗ごと…
偽善…
そう思うのは、間違っているんだろうか?