第16章 ♥DVDレンタルしてどうするの?
しかしここは言うなれば“公共の場”。
こんな場所でまさか、ボロンするわけにも…
いや、さっきの客はしてたなぁ…
それも堂々と…
「ここじゃヤだよ…」
そらそうだろう。
潤の言うことは尤もだ。
「う〜ん、だったらアッチならどう?」
翔さんが指さす先は…
やはり暖簾の奥か!
これは大変だ。
急いで返却されたDVDを持って来なければ!
私は走った。
狭い店内を、そりゃもう全速力で走ったさ。
しかし残念なことに、返却されたDVDは既に他の店員の手に渡ってしまい、カウンターに残されていたのは、無邪気な絵柄のアニメ…なのか?
よ〜く見ると、これは所謂“成人向け”とか言う代物ではないか?
これは天が私に与えて下さったチャンスではなかろうか?
私は“成人向けアニメ”のDVDを手に、例の暖簾を潜った。
瞬間聞こえてきた、苦悶の声。
「うぁ…っ…、それだめだって…」
何よ?
何がダメなのよ?
私は棚と棚の間に身を潜め、僅かに空いた隙間から二人の姿を覗き見た。
「でもコレ外さないと…アレ? おかしいなぁ…、確かにココに入れておいたはずなのに…」
翔さんがビジネスバッグの中をガサゴソと探った。
その横で、下半身を何やら黒いモノで覆った潤が、身体をクネクネと捩った。
「鍵、ないとそれ外せないんだよ…」
鍵?
よ~く見ると、潤の下半身を覆った黒いモノの先端には南京錠がついていた。