第16章 ♥DVDレンタルしてどうするの?
ところが、だ…。
これは私の言わば”趣味”とでも言うべきだろうか…
私はこの手の作品には、全くと言っていいほど興味がない。
いや、興味がないわけではない。
ただ私の嗜好にはそぐわない、と言った方がよいだろうか?
私は所謂”NL(ノーマルラブ)”ではなく、”BL(ボーイズラブ)”にしか興味が持てない。
そう、私は”女体”には全く反応しないのだ。
だからこの空間は、私にとって決して”天国”などではなく、寧ろ”地獄”なのかもしれない。
したがって私は、少しばかり視点を変えてみることにした。
それはこの隔絶した異様な空間に足を踏み入れる客の観察だ。
一日に何十人もの人がこの空間に出入りするわけだが、人目も憚らず堂々としている者、人目を気にしてキョロキョロしている者、一人で来る者、カップルで来る者、実に様々だ。
おっと、次のお客の来店だ。
見たところ男性の二人組だが…
この二人…、ただの友達ではないな。
私のセンサーとレーダーが過剰に反応している。
暫く観察してみることにしよう。
「ねぇ、雅紀はここ入ったことある?」
例の暖簾を指さし、フニャフニャ笑顔の、色黒ギョサン男が、茶髪の、爽やかチャラ男の袖を引っ張った。