第13章 オイラは売れっ子カメラマン
モデル二宮side
大野さんから渡された衣装を手に、薄いカーテンで仕切られただけの更衣室に入った。
姿見の前で着ていた服を脱ぎ、衣装に袖を通す。
大野さんが衣装に選んだのは、黄色のコットンシャツに、黒地に白いストライプのベスト、それに細身のデニム。
ご丁寧に蝶ネクタイまで付いている。
「どう? 着れた?」
薄いカーテンの向こうから大野さんの声がかかる。
「はい、あ、ちょ…あれ?」
慌てて首に回した蝶ネクタイのフックが、上手くかけられない。
「開けるよ?」
僕の返事を待たずにカーテンが開かれた。
「ふふ、こっち向いて?」
大野さんの綺麗な手が僕の首に回された。
その時、甘い香りが僕の鼻を擽った。
なんか…赤ちゃんみたいな匂いだ…
「どした、顔赤いぞ?」
やばい…気付かれちゃう、僕が男の人が好きだって…
僕の手がまたモジモジを始めた。
「よし、出来た。んじゃ、本番行っちゃう?」
大野さんの手が僕の手を握った。
さっきから僕の手がモジモジを始めると、必ず大野さんの手がそっと僕の手を包んでくれる。
それだけで僕の胸がドキドキと高鳴る。
「んじゃ、二宮くんはここ立って? で、オイラが言う通りにポーズとってみてくれる?」
「は、はい…」
今度はスクリーンの前にちゃんとセットが組まれていた。