第13章 オイラは売れっ子カメラマン
モデル二宮side
プリクラとか、携帯で写真を撮ることはあっても、本格的な撮影なんて初めてだから、勝手が分からなくて、気付いたら僕のもじもじした手が綺麗な手に引かれていた。
白いスクリーンの前に立たされ、肩をポンとされると、何故だろう…肩から力が抜けて行った。
「あの、先生…」
「なに…ってか、その”先生”ってのやめない? オイラ先生って柄じゃねぇしさ、”大野”でいいよ」
そう言ってフニャンと笑った大野さんはまるで子犬みたいだ。
「じゃ、あの大野さん?」
「なぁに、二宮くん?」
「あの、よろしくお願いします」
僕はカメラを弄る大野さんに向かって、ペコリと頭を下げた。
「おぅ、任せとけ! 超可愛く撮ってやっからさ」
”可愛く”ってのはちょっと引っかかるけど、自信満々にガッツポーズをして見せる大野さんに、僕も小さくガッツポーズを作って見せた。
「んじゃ、始めるよ? ちょっとそのままじっとしててね?」
カシャカシャッとシャッター音がスタジオ内に響いた。
ファインダーを覗きながら、カメラを操る大野さんの顔からは笑顔が消えていて、代わりに真剣な表情が浮かんだ。
かっこいい…
僕は大野さんの姿に、すっかり見惚れていた。
「OK! 二宮くん、君いいかも!」
大野さんが脇のモニターを確認しながら、嬉しそうに声を上げた。