第12章 ♥家”性”夫は見た?
「ま、まさか旦那様だとは露知らず、大変ご無礼をば致しましたっ!」
俺を訝しむように見下ろす旦那様に向かって何度も頭を下げた。
「いや、俺もちゃんと確認してなかったからいけないんだけどさ…ところでアンタは誰?」
「あのわたくしこういう…」
名刺を出そうとポケットを探ろうとするけど…
俺…エプロンの下…ノーパンじゃん?
「いや~ん」
俺は両手で顔を覆った。
だっていくら何でも恥ずかしすぎるっしょ、これは…
「へ? もしかして、履いてない、とか?」
依頼主には逆らえない俺は、何度も首を縦に振って応える。
「ふ~ん。見せて?」
「はい…」
って、何をですか~?
「いや、だからさ、エプロン捲って見せて、って言ってるの」
そんなことしたら…見えちゃうじゃないですか…”ちゃくりゃい君”が…!
そんなの絶対、無理ったら無理~!
俺は首を横にブルンブルン振った。
「そっか…。残念だけど仕方がない」
ホッと胸を撫で下ろした。
…のも束の間。
「代わりと言っちゃあなんだけど、そこの廊下、雑巾がけしてくれる?」
それならば…と、俺は水の入ったバケツと雑巾を用意した。
バケツの水を雑巾に含ませると、硬く絞った雑巾で床の雑巾がけを開始した。
長い廊下をクラウチングスタートの姿勢で雑巾をかけると、”ちゃくりゃい君”がブランブランと縦に横に揺れた。