第12章 ♥家”性”夫は見た?
奥方様に手を引かれ、通されたのはこれまたお高そうな応接セットに、調度品品の数々に飾られた応接間(最近の若者は“リビング”などと言うらしいが…)。
「ウフ、どぉしたのぉ? お目目パチパチしちゃって、変なのぉ」
終始右肩上がりの口調でクスクス笑う奥方様は、スカートの裾をヒラヒラさせながら、部屋の中を行ったり来たり。
「あの、私は何をすれば宜しいのでしょうか?」
「えっとぉ〜、お掃除でしょぉ、お洗濯でしょぉ、あとはお料理もぉ〜。とりあえずそんな感じかなぁ♪」
指折り数える姿はまるで妖精…そうフェアリーだ。
「承知致しました。では早速…」
ボストンバックからエプロンを取り出し、身に付ける。
「あはっ、櫻井さんたらか〜わい♥」
褒められた、ってことは、見た目だけでも超一流の家政婦に見える、ってことだろうか?
「お褒め頂き、光栄に存じます」
俺は奥方様に深々と頭を下げた。
「じゃあ、まずぅ、お洗濯からお願いしちゃおっかなぁ?」
「はいかしこまりました」
奥方様の案内で浴室に向かうと、奥方様が突然俺に向き直り、
「あのね、びっくりしないでね?」
「も、勿論ですとも!」
奥方様がジャ~ン、とばかりに扉を開くと、足の踏み場がないほどに散乱した洗濯物の”山”。
「こ、これは洗濯のし甲斐がありそうです…ね…」
俺は腕まくりをした。